いいもの観て来た

いいもの観て来た−その1 「高橋由一展」

 凄いのひとこと。日本における近代絵画の始まりは黒田清輝だろう位の認識しか持っていなかったが、それ以前にあれだけの画家がいたことにまずは驚かされた。とくに風景画が印象に残った。江戸末期から明治中期にかけて描かれた作品だが、当時の画材のことを考えると、あれだけの作品を描いたこと自体、不思議な程だ。光と影を軸としながら構図がとられ、しかも画面から感じられる密度感は独特である。
 これまで「鮭」や菊地新学の写真をもとに現在の七日町から旧県庁周辺を描いた有名な作品、それに三島通庸に随行して各地の工事現場を描いた作品しか知らなかったが、あの夥しい作品の数にはびっくり。冗談だが、山形美術館で藤田東湖や大久保利通に出くわすことになるとは……。

いいもの観て来た−その2 「父と暮せば」

 ぶんとく座による「父と暮せば」演劇公演は今回が2度目である。井上ひさし原作の、いわゆる「ヒロシマもの」の芝居だが、テーマの重さに引きずられるような印象も無く、すーっと心に沁み入るいい公演だった。前回にくらべ気負いがなく、台詞もきちんと届いた。小道具への配慮もみられた。そして何より原作者井上ひさし独特の持ち味でもある「軽味」を、ぶんとく座ふうに表現し得ていたように思う。
 東北幻野など地元演劇関係者の全面的な支援と、真室川町の行政的バックアップもあったというが、大きな会場にはたくさんの客が詰めかけ盛大であった。

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