「戊辰山形を学ぶ」第1回座学、無事終了。

平成29年度・山形市西部公民館、郷土史愛好会共催による郷土史を探る連続講座「戊辰山形を学ぶ」の第1回「150年前の政変」と題した小生の講演が、6月3日(土)おかげさまで無事終了致しました。拙い話を熱心にお聞きくださった方々、主催者の皆様、ありがとうございました。あっという間の2時間でしたが、お話ししたいと考えていたことをほぼ予定通りにお伝え出来たように思います。

主催者の方より「参加者のアンケートには《理解できた》《切り口が明確で面白い》《分かりやすかった》などの感想をいただいています」という、小生にとって嬉しいメールを頂戴し、ホッとしていたところです。思っていた以上に多くの方にお聞き頂けたことも感謝です。簡単ですが、まずはお礼とご報告まで。

講演後、小生に話しかけてくださったひとりの老人が、オーソドックスな明治維新観とあまりにも違うので、はじめは戸惑ったが、資料を豊富に使って話してくださったので説得力があり、面白く聴くことができた、と仰ってくださった。こういうことばを頂けて、ほんとうに嬉しかったし、やりがいのようなものを感じることが出来たようにも思った。今回の講演の組み立ての種を明かすと、まず最初に次のような相矛盾するテーゼを提起し、それを様々な資料でつぶして行くという方法をとったため、解り易く感じていただけたのかも知れない。

テーゼ1 なぜか私たちの脳裏にある〈幕末・明治維新〉って、こんなイメージだった。

◎薩・長・土・肥による近代国家建設。

吉田松陰、西郷隆盛、坂本龍馬をはじめとする勇敢な憂国の志士たち(とりわけ「松下村塾」に集っていた高杉晋作、久坂玄瑞、前原一誠、山縣有朋、伊藤博文等)は、尊皇攘夷の旗のもと、海外列強の脅威から我国を守りぬき、その偉業のみならず徳川幕藩体制の固定した身分制度をもとにした古い封建システムを打ち破った。これにより我国はようやく近代国家建設に向けて始動することとなった。さらに日清(明治28)・日露(明治37)の両戦争に勝利し、名実共に列強の仲間入りを果たすことができた。

テーゼ2 ところが明治30年、内村鑑三は新聞『万朝報』紙上に「大虚偽」を書いて、薩長史観を全面的に否定した。

◎内村鑑三の明治維新観

「余輩は思う、新日本は薩長政府の賜物なりというは、虚偽の最も大なるものなりと。開国、新文明、版籍奉還は、一として薩長人士の創意にあらず。否、彼らは攘夷鎖港を主張せし者なり、しこうして自己の便宜と利益のために主義を変えし者なり、すなわち彼等は始めよりの変節者なり。新文明の輸入者とは、彼らが国賊の名を負わせて斬首せし小栗上野介等の類を云うなり。……中略……新日本は文明世界と日本国民との作なり、開港和親は、みな旧幕政府の創意なり、この点に関して、われら日本人は薩長政府に一の恩義なし。」

この対立する2つの代表的な維新観を、様々な資料をもとに、どちらの理解が史実に近いのか、あるいはどちらの見方が通史としての論理的整合性を担保できる史観なのかという問題意識で検証していったことが、比較的うまくいった理由のように思う。終えた今、ホッとしているところである。

第2回:座学、第3回:現地研修、第4回:座学の詳しい情報は3月4日付の当該記事をご覧ください。   下記「戊辰山形を学ぶ」クリックで移動します。

「戊辰山形を学ぶ」

go top