歴史は人によってつくられる

《陸奥に 桜狩りして思うかな 花散らぬ間に 軍せばやと》 繊細な抒情を微塵も感じられないこの和歌の作者をご存知だろうか? 奥羽鎮撫総督府下参謀で長州藩士の世良修蔵である。奥羽鎮撫軍の一行が京都を出て奥羽に向かったのが旧暦の慶応4年3月6日(大坂港を出たのは11日)というから、現在の暦だと京都はちょうど桜の季節だったのかもしれない。そして3月18日、仙台寒風沢 …

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小栗忠順の先見性

ゴールデン・ウイークでとことん疲れ果ててしまっているはずのタイミング=5月9日(土)午前10時〜 「小栗忠順の先見性」というテーマで、上山城でお話しさせて頂きます。 私たちは教科書や副読本で、いやというほど勝海舟について、太平洋を渡った咸臨丸とセットで、あるいは江戸城の無血開城にまつわる西郷隆盛との会談などで教わってきましたが、小栗忠順については「誰?」とい …

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「黒船来襲」再見

謀略に謀略を重ねて念願の武力倒幕を果たした後、新政府は自らの「国造り物語」の制作に着手する。いわゆる勝てば官軍の歴史記述に他ならない。私たちの脳裡に未だ真実であるかのように擦り込まれている《浦賀に突如来襲した「黒船」の脅威》も、その一つの成果なのである。 嘉永6年(1853年)に、マシュー・ペリー率いるアメリカ合衆国海軍東インド艦隊の蒸気船2隻を含む艦船4隻 …

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上山の戊辰戦争関連史跡

1. 官軍墳墓 ……… 上山藩が奥羽鎮撫総督府の命令により、慶応4年4月23日、庄内藩征討戦に出陣。八聖山を拠として六十里越の警備の任についている。その作戦行動において、無念にも斥候(偵察)の任務に当たっていた菅谷友尉(19歳)、谷野廣平(17歳)2人の藩士を同日に失っている。その官軍兵士として没した2人の墳墓 =「官軍墳墓」が市内軽井沢の浄光寺境内に建って …

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戊辰巡りを再開・仙台編

4月5日(日)、本格的な春の到来を待たず、久しぶりに戊辰巡りを再開した。天気には恵まれなかったがのんびり気分、車で仙台まで出掛けて来た。 仙台藩校養賢堂の名残を唯一今に留める正門、そして英傑・玉蟲左太夫の墓碑。このふたつをこの目でしっかり見る事が今回の絞りにしぼったターゲットだった。 以前、養賢堂のあった場所(現在の宮城県庁のある勾当台)を訪れた事はあったが …

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「羽州上山城下温湯記」発見!

元禄15年に書かれた「羽州上山城下温湯記」なる文書が見つかった。 上山の温泉が、月秀上人によって発見されたことは、今は上山に住んでいれば小学生でさえ教わって知っている。それがまた当市の観光事業の根幹を掌っていることも万人が認めるところである。 しかしその裏付けの話となると決定的な史料は存在していないようなのだ。 じつに不思議な話である。 去る3月29日、我家 …

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「廃仏毀釈」

ほとんど知られていないが慶応3年(1867)12月9日の軍事クーデター「王政復古」(岩倉具視・西郷隆盛・大久保利通らの謀略)のあと、新政府によるもう一つの誤謬が進行し始める。「廃仏毀釈」である。日本古来のおおらかな信仰が否定され、国家神道への収斂をもくろむ強制的な歩みが開始されたのである。多くの寺や仏像が焼かれ、僧侶は否応なしに神官に、それを拒絶する僧侶は追 …

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松平定信とラクスマン、そして幕末

「龍馬伝」がそうだったように、攘夷だ、天誅だと熱い連中が集う松下村塾を舞台とした「花燃ゆ」も然り。どうも幕末は嘉永6年(1853)の「黒船来襲」から始まるかのように擦り込まれているようだ。少し頭を冷やして、ここではペリーが来航する半世紀前に飛んでみたい。 寛政の改革で知られる松平定信という老中がいた時代だ。その彼のもとに誰も経験したことのない難問が立ちはだか …

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講演のご案内「吉田大八・再見」

3月8日(日)、午後2時より、天童市民プラザ(天童駅前)において、お話しさせて頂くことになりました。 これまで書かれて来たさまざまな「偉人伝」の中には、虚像に近いものがけっこう多いのではないか、ずっとそう思って来ましたが、その代表的なひとつの例として幕末の天童藩中老・吉田大八を挙げる事ができるように思います。考えてみると「偉人伝」という形式の書き物は、そもそ …

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勝海舟、もう一つの顔

倒幕派に人脈を持ち、それゆえ維新後、偉人として幻想を纏い続けることになった人物=勝海舟。徳川幕府の禄を食む幕臣でありながら、幕府内部の重要な情報を倒幕派にリークした人物でもある。「禁門の変」において御所に大砲を撃ち込んだ長州藩を征伐しようとした通称「長州征伐」の第二次決行を前にして、勝海舟は、幕府内で第一級の機密事項であった小栗忠順提言による「郡県制構想」を …

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