新刊図書のご案内

桜花いのちいっぱいに咲くからに…詩集『はるかなる宇宙の片隅の風そよぐ大地での草野球 スヌーピーとチャーリー・ブラウンとその仲間たち 108 Collected Poems on Peanuts』万里小路譲著
2015年5月5日刊 B6判 136頁 定価:1,200円(税別)

チャールズ・シュルツ氏の『ピーナッツ』に惹かれたのは、四半世紀も前のこと。ペーパーバックの原書の数頁を高校の英語の授業でウォーミングアップ教材として扱ったことがきっかけであった。気楽で肩肘張らない学習であったせいか、それとも奇想天外な発話の数々に魅せられてか、それとも単にスヌーピーがキュートなせいか、生徒には好評であった。回を重ねるにつれ、日常生活にありながらも奇抜な世界を展開する会話文は調子がよく、コミカルでありながら格調があるのはなぜかと考えていた。発せられる台詞に不思議な魅力があるのである。犬や鳥(Ⅰの章)と子どもたち(Ⅱ~Ⅳの章)しか登場しない漫画であるが、内容は子どもだましのものではない。滑稽でユーモアを醸しつつ開かれゆく深遠な哲理は、高校生にすら十分に理解できていたとは言い難い。いや、私にすら十分に理解できていたとも言えまい。それはなぜだろうと考えているうちに、4行4連の詩ができあがっていった。思えば不思議な時間を享受させていただいたものである。(「あとがき」より)


桜花いのちいっぱいに咲くからに…エッセイ集『桜花いのちいっぱいに咲くからに…』本郷和枝著
2015年3月23日刊 四六判180頁 上製本 定価:1600円(税別)
表紙原画:竹内敏夫 ブックデザイン:岩井哲

「父や母、弟達、妹にも無償の愛を惜しみなく降り注いできたつもりだが、それも考えてみれば私の自己満足ではなかったのか。
過ぎたことをあれこれ悔やんでも仕方のないことだが、自分の生き方に深い後悔とやりきれない思いが残る。
〈愛〉とはやっぱり男と女の愛。互いに対等に、同じ目線でみつめ合えるものではなかったのか。今更のように青臭い少女じみた思いにとりつかれてしまう。
十数年前、山寺・風雅の国での講話でお目にかかった寂聴さんの真っ白な歯と瞳の輝きが、いまでも目に焼きついている。」(「瀬戸内寂聴さんのこと」より)

2005年に刊行した詩集『パリ直行便』以来の、著者による2冊目の作品集。20数年の間に綴られた折々のエッセイを集成したもの。滋味深いことばが散りばめられている本書は、著者が他者あるいは社会と擦れ合うときの微妙な和音や軋み音そのものなのかもしれない。

go top