どちらも好きで出来るだけみるようにしているが、それぞれ特色があり、受け止める脳の場所がどうも違うような気がしている。「BS歴史館」はどちらかというと新しく発見された史料などの考察を踏まえた構成になっており、「今夜はヒストリー」の方は疑うことなく従来からの定説に立脚しつつ面白可笑しくエンターテインメントふうに番組を仕上げている。歴史学の番組としてみればやはり「BS歴史館」に軍配があがるのではなかろうか。歴史学上の傾向として、常識と思われていることや定説にはどうも意図的に固定化されたパターンが多いようだし、必ずしも史実を映し出しているとは限らない場合があるようで、その固定強化へつながりかねない番組制作の手法は危険と隣り合わせのように思える。とはいってもわかりやすさにおいて「今夜はヒストリー」も捨てがたいことも事実だ。いまは中断期間中になっているのか、残念ながらしばらく放映のない「ブラタモリ」は不思議なくらい面白かった。タモリと久保田アナの軽妙なやりとり。テーマに沿いながら歩行のリズムで捉えられていく現在の東京と江戸の面影、冗談や3Dのイラストレーションをまじえ、想像力豊かに展開されていく東京と江戸の時空の差異を埋めるゲストとの会話、とりわけタモリのつぶやきは絶妙で、あらゆる先入見を排し、目の高さで風景が切り取られ、語られていく。大言壮語もなく洒脱な日常語もじつに小気味よかった。現在、他局でも類似番組を制作放映しているようだが、単なる街中の散歩、食べ歩きにとどまっている印象があり、まったくの別物。一日も早い「ブラタモリ」の復活を願う。