マツノ書店のこと

 マツノ書店と言ってもご存知の方は少ないと思う。山口県にある出版社で、古書を復刻するという貴重な仕事を継続的にやられているところだ。現存という意味では希少本になってしまっている明治期、大正期に刊行された「幕末維新」関連書籍を次々に復刻し、研究者に寄与し続けている出版社なのである。小生も以前に一度だけ恩恵に預かったことがあったが、このたびは待ちに待ったものが同時に2点刊行され、即予約で入手することが出来た。戊辰戦争研究の底本となっていると言ってもいいそれらの書籍は、近隣一円の図書館の蔵書検索をしてみても県立図書館以外には置いていないものなのである。
 もし、マツノ書店のような仕事を手がける出版社が無いことを考えると、逆に、売り上げ部数だけを競うようなはなばなしいビジネスを展開している大手の出版社の意味が相対化されず、出版業界全体うすっぺらなものに映ってしまうだろう。A5判600頁の函入り、しかも糸かがり上製本を限定400部で作り上げる心意気は賞賛に値する。

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