映画愛好者のサークル「えいあいれん」が母体となって設立されたフォーラム山形が、今年で30周年という。ということは、小生が34歳のときに産声をあげたということだ。つい昨日のことのような感じだが「思えば遠く来たもんだ」の中原中也の詩行が口をついて出る。その頃ちょうど「場」という総合誌の編集の仕事をしていて、陰ながらフォーラム設立準備の応援をした記憶がある。だが、正直言って、お金にも時間にも余裕の無かった自分がどんな応援をしたのか、あるいは出来たのか、あまり覚えていない。ただ、好きな事に躊躇する事無く向かって行く長沢裕二・英子夫妻の姿勢に共感をおぼえたことだけははっきりと記憶に残っている。
30周年の記念誌を作成したいので、原稿を寄せて欲しいという連絡が入り、ドキッとした。なぜなら、ほとんど映画館フォーラムに足を運んでいなかったからだ。近年観た映画と言えば「スティーヴ・ジョブス」くらいなもので、そういう自分が果たして稿を寄せていいものかどうか…という自問がぐるぐると体内を巡っていたからだ。結局、迷いつつも稿を送ることにしたのは、相変わらず初心を貫いている長沢裕二・英子夫妻へのエールをおくりたかったからである。それと、形は違っても、やりたいことを諦めずに粘ってやり続けている同世代の長沢夫妻に、畏れ多くも自分を重ね合わせ、何とも言えないシンパシーを感じているからでもある。フォーラムさん、一日でも、いや一時間でも長く、これからも時を刻み続けて行って欲しい。