ある報道記事から…

大事なのは《政治思想》ではなく《倫理》。しみじみとそう思う。謙虚な気持ちで下に引用したある報道記事に目を通してみてほしい。どんな政治的プロパガンダよりも考えさせられる静かなメッセージだ。単なる理想主義的な甘いことばでもない。表現はいたって平明だが、知性に裏打ちされたゆるぎない信念からあぶり出されているようなことばだ。小生にはそう響く。

〈戦争は、防衛を名目に始まる。
戦争は、兵器産業に富をもたらす。
戦争は、すぐに制御が効かなくなる。〉
安保法案の採決が衆院特別委員会で強行された15日の前夜、京都大吉田キャンパス(京都市)の教室で、詩のような声明書が読み上げられた。
〈戦争は、始めるよりも終えるほうが難しい。
戦争は、兵士だけでなく、老人や子どもにも災いをもたらす。
戦争は、人々の四肢だけでなく、心の中にも深い傷を負わせる。〉
京都大人文科学研究所で准教授を務める藤原辰史(たつし)さん(38)が、ゆっくりと読んでいく。学者、研究者、市民合わせて賛同者が3万人を超えた「安全保障関連法案に反対する学者の会」と学生たちによる緊急シンポジウムの場。約600人の参加者でぎゅうぎゅう詰めになり、熱気が漂う教室が静寂に包まれる。
〈精神は、操作の対象物ではない。
生命は、誰かの持ち駒ではない。
海は、基地に押しつぶされてはならない。
空は、戦闘機の爆音に消されてはならない。〉
太平洋戦争が終わってから70年。沖縄の人たちは今も米軍基地と向き合う。集団的自衛権を使い、自衛隊が海外で武力を行使することを認める安保法案は様々な危険性をはらむ。
〈血を流すことを貢献と考える普通の国よりは、
知を生み出すことを誇る特殊な国に生きたい。〉
戦後70年間、憲法9条のもとで戦争を放棄してきた日本。声明書は、こうした姿勢を変えて米国との関係を強化したうえでの「積極的平和主義」を推し進めようとする安倍政権に疑問を投げかける。そして、太平洋戦争で大学が戦争に協力したことへの反省も込め、決意を示す。
〈学問は、戦争の武器ではない。
学問は、商売の道具ではない。
学問は、権力の下僕ではない。
生きる場所と考える自由を守り、創るために、
私たちはまず、
思い上がった権力にくさびを打ちこまなくてはならない。〉
藤原さんが1分半ほどかけて読み終えると、教室内に拍手が10秒ほど続いた。

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