ついに刊行!『養正館のひぐらし』野口千明著

刊行が遅れておりましたが、ようやくこぎ着けました。天童藩校養正館に学ぶ少年たちの目線で描いた戊辰戦争をめぐる野口千明氏渾身の時代小説です。とりわけ天童藩にとって「庄内藩征討」は、いろいろな意味で熟考を強いてくるテーマです。野口氏独自の視点で書かれた物語をお楽しみ頂けたらと思います。

野口表紙ーHP用_ページ_2

内容につきまして、松田哲夫氏の解説文「野口千明『養正館のひぐらし』に寄せて」から一部抜粋で掲載させて頂きます。

「天童藩を見舞った悲劇は、戊辰戦争のひとコマとして注目されており、長谷川伸が戯曲「吉田大八」(昭和九年)、子母澤寛が小説「奔流」(昭和十六年)を書いているという。これらの作品は、天童藩の悲劇の主役とも言うべき中老吉田大八を中心に描かれているようだ。

藩の上層部にピントを合わせて描いた先人に対して、野口さんの作品は、悲劇の周辺(というよりは現場)にいた人たちに焦点を当てている。すなわち、天童の養正館に通う少年たちであり、左沢村の博徒である。こういう描き方をしたことで、悲劇に直面した天童の人たちが、どのように反応し、振る舞ったかが目に見えるようだ。

少年たちや博徒たち、そして戦乱期には活き活きとする、中村次郎兵衛という魅力的なキャラクターなども出てくるのだが、惜しむらくはクライマックスの盛り上がりに欠けるような気がしてならない。

しかし、これは、作者である野口さんの責任ではなく、史実がそういうことだったのだろう。庄内藩の天童藩への攻撃という局面でも、被害を最小限に抑える努力がはかられているようで、内戦状態から血で血を洗う悲惨な関係にエスカレートさせない知恵が働いていたのかもしれない。」

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四六判 糸かがり上製本 372頁 定価/1,800円(税別)

装丁/南伸坊氏   解説/松田哲夫氏 

 

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