津田左右吉『明治維新の研究』

知人が新聞広告を見て「知ってた?」って教えてくれた。津田左右吉が「幕末論」を書いていたことすらまったく知らなかった。読んでみたいと思いすかさずゲット!

写真左下の文言、出版社が購買を煽るために書いたコピーかと思って読んだら、なんと津田左右吉自身が書き込んだ表現だったことを知りまたまた驚いた。

《明治維新、またそれに引き続いて歴史的に次第に展開せられてきた明治初年のいろいろの改革の性質と意義とについてのわたくしの考えは、いま世間で多く語られていることとは遥かに違ったところがあるので、その一端を述べてみたい。わたくしの見るところでは、世間で語られていることのうちには、この短い年月の間にも歴史的の展開があったのに、その展開の過程を考えずに、すべてを一度に起こった事件のように思うのと、改革を行なったものの志向とそのときの世情人心とを考えずしてその結果として後から知られることのみを見るのと、この二つから来ているものがあるらしい。また近年に至って生じたいわゆる超国家主義者の言説に現われているような思想が、明治時代から世を支配していたものであるが如く思い、それによって維新の性質を推測しようとするものもあるようであるが、さらにそれを上代以来の過去の歴史の全体に及ぼし、我が国の国家及び政治の本質がそこにあるように考える考え方さえもあるらしく解せられる。新しい思想により新しい観点から、断えず歴史に新解釈を加えてゆくことは、もとより必要であるが、そういう解釈は、どこまでも事実に基づかねばならぬ。事実に背き事実を無視することは許されない。何が事実であるかは見るものの眼によって違う、ということは、もとより考えられるが、動かすべからざる事実を求めねばならぬこと、また如何なる眼から見ても事実としなければならぬもののあることも、明らかである。それがなければ史学というものの成り立ちようがない。》              (本書「はじめに」より明治維新史の取り扱いについて)

第1章 明治の新政府における旧幕臣の去就
第2章 幕末における政府とそれに対する反動勢力
第3章 維新前後における道徳生活の問題
第4章 トクガワ将軍の「大政奉還」
第5章 維新政府の宣伝政策
第6章 明治憲法の成立まで
おわりに―サイゴウ・タカモリ

*資料【津田左右吉(1873―1961)文献批判から出発し、冷徹な立場で問題の全面的な検討を行い、真実を追究しようとする津田の学問的研究態度は、ともすれば感情的鑑賞にとどまる態度の多い日本人歴史研究家のなかでは独創的なものがある。】

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