〈往路〉と〈復路〉

 人間の生涯を仮に88年としてみる。そのうち55年は〈往路〉(イケイケ期)、33年が〈復路〉(マテマテ期)に該当するような気がする。無我夢中で己の世界を拡げ、突っ走るだけつっぱしるのが〈往路〉で、ある日、ふと老の感覚に直面し、彼岸へうっすらと死のイメージを抱きながら生き始める時間を〈復路〉と考えるとき、まさしく往きはよいよい復路(かえり)はこわい、なのだ。〈 …

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つきぬけた言葉

 ロンドン・オリンピックも終了した。蒸し暑い夏のひととき大いに楽しませてもらった。勝者、敗者から発せられたさまざまなコメントが、インターネット・テレビ・新聞紙上を飛び交っているが、その中でボクシングのミドル級で48年ぶりの金メダルをとった村田諒太選手の発した言葉はナイスだった。「このクラスで日本人がメダルをとるのは無理だろうと言われていたけど、俺にとって無理 …

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いいもの観て来た

いいもの観て来た−その1 「高橋由一展」  凄いのひとこと。日本における近代絵画の始まりは黒田清輝だろう位の認識しか持っていなかったが、それ以前にあれだけの画家がいたことにまずは驚かされた。とくに風景画が印象に残った。江戸末期から明治中期にかけて描かれた作品だが、当時の画材のことを考えると、あれだけの作品を描いたこと自体、不思議な程だ。光と影を軸としながら構 …

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自然な「ことば」へ

 オーバーアクションとだみ声。わざとらしいネタ。正直、これらは見ているだけでも疲れる。バラエティー番組の「ことば」は、微妙で、もの静かなニュアンスをことごとくそぎ落としながら簡略化し、テンションだけが高い。よりインパクトのある「ことば」を発しないと視聴者に届かない、そんな不安を芸人が持ってしまっている裏返しなのだろう。しかし、バラエティー番組は若者の間で圧倒 …

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韻律について

  ススメ ススメ 兵隊ススメ。……A   サイタ サイタ 櫻がサイタ。……B   キライ キライ 戦争キライ。……C  疑うことを知らない常識的な読みでは、Aは好戦的な心情の表現、それに対してCは反戦的な心情に連なっていくように読めるかも知れない。しかし、自己表出の根源を韻律に求めてみたい私の視点からは、単純にそうはならない。勝手気ままに意味だけを変えて表 …

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スタジアムにて

 第26節、対松本山雅FC戦(NDソフトスタジアム山形)を観戦してきたが、今回はゲームにはふれない。  ずっと気になっていたことがある。サッカー観戦を始めた10年以上も前からずっとだ。ご存知のとおりスタジアムには小・中学校の児童たちもたくさん詰めかけている。キックオフ前のグラウンドでは両チームの選手がウォーミングアップをかねて最終調整をする。そして時間が経過 …

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「フェイスブック」に思う

 信頼しているとある青年から「お友だちリクエスト」を頂き、「承認」ボタンをクリックして始まった小生の「フェイスブック」。いま、はたと「フェイスブック」って何だろうという疑問に直面している。まめな方々は日々、写真やブログを更新し、さまざまな情報を投稿し続けているのだが、明確な目的意識をもってやられている方々は別として、どう受け止めたらいいのかわからないというの …

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なでしこ効果

 昨日の「なでしこ」につづいて、男子チームも優勝候補と目されていたスペインを破り、すばらしいスタートをきったようだ。というのは情けないことにその結果をインターネットで今知ったところなのである。観ようと思っていたのだが、あっという間に瞼が仲良しになってしまっていて、そのまま朝をむかえてしまったというわけ。ロンドンに出発する前に行われた何試合かの親善試合をみる限 …

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記者会見への寸感

 線量計に鉛のふたをして、警告音が頻繁にならないように細工をしていた会社の社長が、記者会見で言っていた。「あまり警告音が鳴り続けると作業員が不安に思うから……」。耳を疑った。作業員が不安に思うから、放射線を限度より多く浴びさせてあげられるように工夫したという文脈ではないか! 万が一、鉛のふたの効果で直前まで警告音がならず、高濃度の放射線量地帯にその作業員が突 …

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科学者のことば

 「原発」にまつわる講演とシンポジュームが遊学館で開かれた。講演とシンポジュームが終了したあと、主催者は会場からの質問を受けうけつけた。そこで「科学者」と「一般人」のことばの位相のずれが露呈した部分があった。「科学者」は、瓦礫の処理についての質問に、純粋に科学的論理で言えば「瓦礫の処理の引き受けはやるべきではない」という趣旨の発言をした。それに対して質問者は …

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