エッセイ集


サイトユフジ著『ドナウ漂流』サイトユフジ著『ドナウ漂流』 発行/2023年3月31日
四六判 並製本 装幀:冬澤未都彦 定価:1,300円(税別)

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「もしもし、キタヤマさんですか?」
突然かかってきた電話に「いえ」と言いかけて、慌てて飲みこんだ。どぎまぎしながら「はい、キタヤマです」と答えた。数年前から「北山青史」というペンネームで文学活動を始めていたのだが、実際に呼び掛けられたことはそう多くなかった。「自分史文学賞」にもその名前で応募したのだった。…中略…授賞式後の懇談で選者の柴田翔氏と話をした。柴田氏に強く推していただいたと知った。あの『されどわれらが日々—』の柴田翔氏に。何を話したか、緊張と興奮でほとんど覚えていない。
後日、某テレビ局から非常勤講師をしている専門学校に電話が来た。
何ごとかと受話器を受けとると、テレビ番組でハイモーを探してくれるという話だった。一瞬考えて、断った。たとえ見つけてくれたとしても、ハイモーがそんなエンタメ番組のテレビ・クルーを受け入れるとは思えない。むしろ、依頼した僕を軽蔑するかも知れない。いや、きっと軽蔑する。そう思った。

帰国して三十五年が過ぎた。湧きおこる思い出は切りもない。

…中略…作者名を画家としての名前サイトユフジに変更した。サイトユフジの作品を知っている方々にぜひ読んで欲しいと思うから。 (「あとがき」より)

【註】原文は2011年執筆、北九州市主催の第21回「自分史文学賞」で佳作(2席)を受賞。応募総数403編 選者/柴田翔

このたびの出版に際し、原文に加筆訂正を施しています。



市村幸夫『山形旅籠町散歩』市村幸夫著『山形旅籠町散歩』 2023年1月25日刊
A5判 全100頁 並製本 定価:1,200円(税別)装幀:岩井哲

地域誌『やまがた街角』に連載し好評だった歴史コラムに、未収録の新稿を加え集成した著者の新著。

石工の流れを持つ母親の実家である信濃屋仁兵衛を追いかけて四十年、もう何も言い残すことは無いと思いつつ、限りのある人生を振り返ってみて、なにか残し物があるなと感じていた。生まれ故郷の旅籠町のことである。旅籠屋も寺も消えてしまった町ではあるが、まだ何かが残っている気配は感じていた。
雪の解けるころ雁島公園では凧あげに夢中になっていた。詩人の清田美伯とは小四の時一緒だった。感性が研ぎ澄まされていることを子供心に感じていた。成人して雁島のマーケットは酒飲みを覚えた場所でもあった。
平屋の小さな家で育ったことは、二階の部屋への願望があったようで、小鳥屋の二階から眺めた義光祭の光景が今でも鮮明に残っている。また、机にあった手回しの鉛筆削りが気になってしかたがなかった。八十年も前のことなのに不思議と残像が残っているようだ。
…中略…
大きなビルが建ち並び、小さな小路や子供の歓声は姿を消しつつあるが、一卜町や三の丸鍄口辺りに旅籠町の思い出を感じとれることが嬉しい。(本書「あとがき」より)



佐藤幸子著『ありのまゝ記』佐藤幸子著『ありのまゝ記』 2020年3月刊
四六判 全186頁 糸かがり上製本 定価:1,300円(税別)装幀:岩井哲

〝あら玉の 宿の捧げし命とも〟
昭和26年創業(日本の宿古窯ー編集者註)以来70年、ゼロからの出発だった私が大勢の皆様からの支援を受け育てられてきました。そこには与えられた運命を生かす出会いが数々ございました。これらを讀賣新聞の〝インク壷〟という欄に書き、エッセイとして17年も掲載して頂きました。
…中略…
水道もない、電話もない。電気でさえこの宿まで。あとは真っ暗闇の山の宿。先ず足もとから。
思いついたのが、この土地の伝統を生かすこと。すべては原点に返り、それらをアイディアとして「創造は力なり」の思いを叶えることだった。
いま卒寿を迎え、私の2代目、3代目も後継ぎとして新しい経営をめざして頑張っている。若い社員も、私を支えてくれた社員も心からお客様の喜びを自分の喜びとしている点、尊いものとして受けとめている。「あとがき」より
著者の佐藤幸子さんは御歳91。曰く「この本はわたしの終活です」。そう仰りながらもすこぶる元気、そして滑舌もしっかりされていて驚きです。小生なんかよりよほどポジティブな感じを受けます。
(「あとがき」より)

 


阿部和久著『本と紅茶とおしゃべりと』阿部和久著『本と紅茶とおしゃべりと』 2019年7月刊
四六判全282頁 並製本 定価:1,500円(税別) 表紙画:遠藤由美子

この本には、筆者が勤務した山形西高の生徒たちのために佐藤さんと鈴木さんが青春小説などを取り上げて話し合う『2人のティータイム 西高ヴァージョン』というスピンオフが存在します。二〇一六(平成二十八)年春、その中から二編(恩田陸の『ライオンハート』と三浦しをんの『風が強く吹いている』)が山形県中学校長会・山形県中学校教育研究会国語部会及び学校図書館部会の編集による『やまがた中学生の読書2』(山形教育用品株式会社)に収録されました。それにより、この『二人のティータイム 本と紅茶とおしゃべりと』 には、新聞連載時には想定していなかった中学生の読者、早熟な読者が生まれる可能性が出てきました。そのため連載に加筆修正を施す際、「あらすじ」も含め、若い人向けの注を増やしたり、少し多めにルビを振ったりしています。ヴェテランの読者の皆様のご寛容をいただければ幸いです。『2人のティータイム 西高ヴァージョン』は、本書を作って下さった山形県上山市の出版工房・書肆犀のホームページ(https://syoshi-sai.com)から無料でダウンロードして読むことができます。興味のある方は覗いてみて下さい。
(「あとがき」より)


本郷和枝エッセイ集『一本の口紅』本郷和枝エッセイ集『一本の口紅』 2018年5月25日刊
四六判 118ページ 糸かがり上製本 定価/1,500円(税別) 装幀:岩井哲

私の「宮城学院」入学は、母の強い想いだった。毎日の食事さえやっとの私の家庭では、全く考えられなかったことだった。
父と母は、毎日のように、私の宮城学院入学のことで争っていた。
確かに父の言う通り、石巻から夜逃げ同様に一家が仙台に移り住み、父の内装工事も不定期な仕事で、確実な収入が全くなかったのだ。
母の仕事、生命保険の外交も、契約がとれなければ収入がゼロだ。
そんな中で、私立女子大学の名門校、お嬢さま学校と呼ばれる宮城学院女子短期大学国文科に入学出来る訳がなかった。
父も母も二人共、高校卒業後専門学校に入っていたのだ。自分達が専門学校を出ているのに、娘が高校だけでは……。母の強い願望でもあった。
宮城学院の食堂は中央の庭の噴水の近くにあった。
昼食時になると、友達はフレアースカートをひるがえすように、赤い化粧袋と財布を手に学生食堂に集まった。
昼食のおそば、ハンバーグ定食など、楽しい昼食が終わると、今度はコーヒーを飲む。それが終わると赤い化粧袋から、コンパクトを出し、顔を軽くたたく。次は口紅を出し、食事をして色の落ちた唇に、そっと紅を引く。すると見違えるように顔がパッと輝く……。一本の口紅が、まるで魔法使いのように、顔を華やかに輝かせる。
私は、じーっと、友達の顔のお直しを、いつも見ていた。
“一本の口紅が、私も欲しい!” あんなに美しく顔を輝かせるものが欲しい。
あの頃の、一本の口紅に対する私の深い想いは、いまも変らない。
(『一本の口紅』収録表題作全文)


武田和夫『航跡-V』『航跡-V』武田和夫著 2017年3月30日刊
B5判 160頁 並製本 定価/1,500円(税別)

第4編を出してから、3年間、毎月県医師会には医師が興味を持ってくれそうなもの、市医師会には一般向けに毎月1ページを埋めてきました。
終わりに近い砂時計は、残りの砂がどんどん少なくなるのがはっきり見えて、本当は同じ速度で落ちているのに、落ちる速度が速くなるような感じです。砂時計の砂の残り具合は目に見えますが、高齢になっても人生の残りの持ち時間は誰も全く分かりません。
東日本大震災と津波による原子力発電所の事故の後始末は、今後何十年もかかるでしょう。終わりがいつになるかわかりません。2016年4月には熊本城の堅固な石垣が崩れるような大地震が起こりました。日本列島は火山と活断層の上に作られているようなものです、温泉などの恵みもありますが、みんな災害と隣り合わせで生活しています。
戦後の復興で作られた高速道路や橋のインフラは、そろそろ老朽化が進み、災害対策が必要な時期に来ています。しかし橋も人間も明日も今日と同じだろうと考え、毎日を安易に過ごしています。
生きているもの、造られたものは必ず終わりがあります。尊厳死、老衰死、平穏死ということが話題になりますが、2人での生活もやがて1人になり、誰にも看取られない孤独死も、統計ではかなりの率で待ち受けています。そんな世の中に何か好いことを残すことを考え、好奇心を持ち、ボケないように頑張ってもう少しこの世の中で、お邪魔虫でも生かしておいてもらおうと思います。
(「第5編の序」より)


菊地隆三『ぐうたら草』『ぐうたら草』菊地隆三著 2017年3月30日刊
四六判 320頁 並製本 定価/1,300円(税別)

日本語を大切にし、しかも自由に何でも発表できる〈言の葉倶楽部〉という会員誌があるのを知り、かなり以前、私も參加させて貰った。
2008年から誌型を新たにして活動することになり、私もテーマを決めて、何か連載物を書いてみたいと思った。
私は医業を生業にして来たが、今の世情は、日本中、いや世界中、過激な競争社会で、皆、ストレスが溜まって苛立っている。
世の中が、余りギスギスしないで、寛容とユーモア心で、皆、もう少しのんびり生きる術はないかと、いつも思っていた。
私は、正直言って、生来、生真面目というよりは、むしろ、かなり(ぐうたら)な人間であった。
ふと、「ぐうたら草」という言葉が、思い浮かんだ。
ぐうたら草などという草があるかどうかは、全く知らない。
すると、必然的に、(徒然草)を思い浮かべた。
「よし。〈言の葉倶楽部〉の原稿は、(徒然草)のエピゴーネンで、(ぐうたら草)で行こう」と、心が決まった。
偉大なる兼好法師様の真似をするなどとは、浅学菲才のわが身では不可能に近く、また大変烏滸がましいことと思ったが、若い頃から(徒然草)を読み、(または強制的に読まされ続けて)、心から敬服しているので、もう700年近く過ぎた今日、その形式ぐらい真似ても罰が当たらないだろうと、勝手に決めこみ、2008年7月より、(ぐうたら草)の題名で、序段から書き始めた。
そして、2016年9月、やっと(徒然草)の最終段と同じ234段に、(ぐうたら草)も辿り着いた。
振り返って見ると、既に8年も過ぎ、私はとうに傘寿も過ぎたが、今なお生きている。
これは、天の御蔭というほかはない。
この度、(ぐうたら草)の出版を思い立ち、誌上に発表した時の各段の順位を大幅に組み替え、文面内容もかなり加筆・削除・訂正の上、單行本にまとめ上げた。
なお掲載した誌が〈言の葉倶楽部〉というものだから、文中に、以前から皆に大事にされて来た古典から現代までの、日本語の名句、名詩、諺、更に漢文など、随処に引用させて貰ったことを、感謝の気持を以って、付記しておく。
また、本の扉には、私の敬服する小松均画伯から頂いた『天』の一文字を使わせて頂いた。
本書が、現代の過激な競争社会でのストレス縮少に、少しでも役立てば、望外の喜びである。
(「あとがき」より)


『パリの街角から』阿部和久著『パリの街角から』阿部和久著  2016年1月31日刊
四六判 200頁 並製本 定価/1,300円(税別) 装幀:岩井哲
何歳(いくつ)になっても学ぶのは楽しい。本書は臨場感富むパリのガイドブックであると同時に、知ること、学ぶこと、異文化を体験することの楽しさを伝える「遊学のすすめ」である。山形西高退職後に、フランス語の学び直しを決意し、パリ留学に挑んだ阿部元校長の体験記から、私たちは「この一歩を踏み出す」ことの果実を知る。

オックスフォード大学教授 苅谷剛彦

確かにテロはこわいけど、読めば絶対パリに行きたくなる。山形新聞の好評連載とフランスから生徒に送り続けた「西高通信」に大幅加筆、新しい『パリの街角から』が誕生した。 生きる喜びに満ちた、山形人による山形人のためのもう一つのパリ案内。

「パリで街を歩いていて時々ウインドウに映る自分を見て苦笑した。パーカーを着てジーンズを履いて足早に歩く姿。どこからどう見てもアジア系移民 の一人にしか見えない。それこそが掛け値無しの自分である。フランス語を使って今日を生き延びていけるか、ただそれだけが問われている。」 (本書所収「パリが好き」から)


桜花いのちいっぱいに咲くからに…『桜花いのちいっぱいに咲くからに…』本郷和枝著 2015年3月23日刊 四六判180頁 上製本 定価:1600円(税別) 表紙原画:竹内敏夫 装幀:岩井哲

「父や母、弟達、妹にも無償の愛を惜しみなく降り注いできたつもりだが、それも考えてみれば私の自己満足ではなかったのか。
過ぎたことをあれこれ悔やんでも仕方のないことだが、自分の生き方に深い後悔とやりきれない思いが残る。
〈愛〉とはやっぱり男と女の愛。互いに対等に、同じ目線でみつめ合えるものではなかったのか。今更のように青臭い少女じみた思いにとりつかれてしまう。
十数年前、山寺・風雅の国での講話でお目にかかった寂聴さんの真っ白な歯と瞳の輝きが、いまでも目に焼きついている。」     (「瀬戸内寂聴さんのこと」より)

2005年に刊行した詩集『パリ直行便』以来の、著者による2冊目の作品集。20数年の間に綴られた折々のエッセイを集成したもの。滋味深いことばが散りばめられている本書は、著者が社会と擦れ合うときの微妙な音そのものである。


柏倉一之『母は、ほんとうは、頑固で強かった。』柏倉一之『母は、ほんとうは、頑固で強かった。』
2012.9.28
B6判 150頁 定価/1,400円[税別]

著者が実際に体験した母の介護を軸に、家族の絆について書き下ろした一書。
読む者は、自らの生涯をどのように引き受け、全うしていくのか、知らず知らずのうちに問われよう。


佐竹幸子『星ふる村落からこんばんは』佐竹幸子『星ふる村落からこんばんは』
2011.12.8
B6判 248頁 定価/1,500円[税別]


西村岑一『デッカチ先生 学校日記』西村岑一『デッカチ先生 学校日記』
2011.9.30
B6判 248頁 定価/1,800円[税別]


後藤和弘『教えることは学ぶこと』
2006.8.25
A5判 234頁[非売品]


高橋英司『Xへの手紙』
2001.5
新書判 152頁 定価/1,000円[税別]


木村迪夫『田園の大逆襲』
1999.11
B6判 226頁 定価/1,800円[税別]


大原螢『枯木野の色』
1994.9
新書判 146頁 定価/1,000円[税別]


根津宏明『俺が、宇宙になる』
1990.7
新書判 132頁 定価/1,000円[税別]


高橋卓也『一回限りの絶賛上映』
1989.7
新書判 100頁 定価/1,000円[税別]


木村迪夫『くだもの・ずいそう』木村迪夫『くだもの・ずいそう』
1989.5
新書判 100頁 定価/1,000円[税別]


会田健一郎『SCRAP』会田健一郎『SCRAP』
1988.1
A5判変形 250頁 定価/1,800円[税別]

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