バーゲンブック。

八木書店から届く「新本バーゲンブック」の目録を眺めるのは楽しい。だが、想像するに、きっと出版社にとっては辛い状況なのだろう。新本が定価の半値前後、本によっては3分の1近いものもリストアップされている。以前『北越戊辰戦争史料集』(稲川明雄編/新人物往来社)を半値以下で購入し、味をしめた。そしてこのたびは、「言語にとって美とはなにか」「共同幻想論」「心的現象論序説」「マス・イメージ論」「最後の親鸞」等を著して、本質的な批評表現のメソッドを提起し続けた思想家・故吉本隆明のアンソロジーともいえる『吉本隆明が語る戦後55年』全12巻(三交社)を思い切って購入。自分の、世界認識や文学観に影響を与え続けてくれた氏の全仕事を、時間に余裕ができたら原著作とは別の角度からあらためて巡ってみようと思った次第。

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バーゲンブックはいわゆる古書ではない。おそらく、各出版社の倉庫につまれている在庫本(デッドストックとは限らない)を割安で仕入れ、販売しているシステムだ。手に取る読者にとっては新本で、美品である。車で言えば「新古車」のようなものだろう。必要性を感じつつも高価で購入出来なかった本を安価で入手出来るシステムは自分にとってはすばらしいが、版元にとっては墓穴を掘る事にもなりかねない。そんな両者の微妙なバランスの上で成り立っているきわどい世界のようである。

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