憲法記念日に思う

NHKスペシャル「憲法70年“平和国家”はこうして生まれた」は、すばらしい番組(仕事)だった。
 
昭和天皇の「平和国家建設への決意」=「勅書」からスタートした「昭和憲法」制定までのあゆみは、一部の人たちが主張するように一方的にアメリカに押し付けられたものではなく、2度にわたる世界大戦の悲劇を超克すべく構想された当時の日米の垣根を越えた英知の結晶であったことを、見事にたどってみせてくれた。まさしく時宜を得た企画だったと思う。とくに9条の平和条項は、幣原(しではら)首相自らが起案し、マッカーサーに認めさせた自主的なものであったことが、最近発見された資料から明らかになったのだという。ドキュメンタリー全体を通してとりわけ印象的だったのは、憲法草案を吟味した当時の衆議院小委員会を議事録をもとにイメージした再現映像だ。現在の国会の様子との気が遠くなるほどのクオリティーの違い、一語一語、日本語を大切にしながら慎重に煮詰め思考して行く各委員の熱意と良心とデリカシー。なんと党派の枠を超えて自由闊達な議論が行われていたようで隔世の感があった。さらに重要書類も簡単に隠したり廃棄したりしているらしい現今の状況にくらべ、国民に対する責任の履行において厳格に保存されている公文書の管理のことなどなど・・・。
 
歴史の重みをズシリと内包した「昭和憲法」を、浮薄な時代気分や単なる思い込み、イデオロギー的なプロパガンダで云々してはなるまい。しみじみとそう感じた。先験的な立場に立脚して、改憲や護憲を、心情的に議論する前に、「現行憲法」の成り立ちとその背景、歴史的な意味、そして条文一つひとつの内容について再度認識を深めてみる必要を痛感した。

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