〝恫喝外交をしかける欧米列強外交団、大英帝国の支援を受けた薩摩・長州のテロリズム、命を賭してわたり合った幕臣官僚たち。日本近代史を覆す衝撃の維新論「明治維新という過ち」待望の第二弾!〟
これが新著の帯に刷りおかれた文言である。
圧倒的なインパクトを与えた前著『明治維新という過ち』(毎日ワンズ刊)の続編として、つい先日、『官賊と幕臣たち〜列強の日本侵略を防いだ徳川テクノクラート』(同)が刊行された。不覚にもまったく知らずにいたが、知人がわざわざ教えてくれ、さっそく書店に走り購入と相なった。
著者原田伊織氏のことばによれば、前著で書ききれなかった部分(不親切にも紙幅の関係等で省略してしまった内容など)や、どうしても補っておきたい領域について、読者のためにも自分のためにも埋めておきたいという衝動が止み難くあり、そのエネルギーに突き動かされるようにして書き上げた一書ということになる。目次をみるとさすがに周到で、これまでの幕末維新史をさらにトータルに組み替えようとしている意図と熱気、そして明晰な視座が見て取れる。前著よりさらに広角的な構成になったことは本著の目次からもうかがえる。それは次ぎのようなものである。
・其の1 /鎖国とは何であったか
・其の2 /オランダの対日貿易独占
・其の3 /幕府の対外協調路線
・其の4 /幕末日米通貨戦争
・其の5 /官と賊
・あとがきに代えて〜一言以て国を滅ぼすべきもの
小生も拙著『異貌の維新』(紅花書房刊)において、幕末期に繰り広げられた尊王攘夷運動の不可解さを追うために、拙いながら、海外列強との関係をより構造的に捉えておく必要性を強く感じ、ペリー黒船艦隊の来襲の半世紀前に起こった「露寇事件」から稿を起こした。これに対し、原田伊織氏はさらに徹底化し、徳川幕府成立以前からのわが国と海外列強との関係を見据える方法を示しているのである。これまで明治以降常識のように示されて来た数々の海外との関係性についての認識を根本的に捉え直し、独自の明治維新論の深化に挑んでいる。
またしても必読の書で、内容は驚きに満ちている。