伊勢崎賢治氏《講演》抜粋

伊勢崎賢治氏(統合幕僚幹部学校教師・東京外語大教授)《講演》                    (一部伏せ字に、そして多少抜粋しております。論旨についてはいっさい加工しておりませんー引用者註)
 
今、僕の紹介にありましたが、NGO職員とか、国連の職員。
僕もたぶん、護憲派で、リベラルで、平和主義者…だという印象をもたれているかもしれませんが…違った側面もありまして、実は、僕は防衛省の自衛隊の先生です。もう10年やってます。ただの自衛隊ではありません。東京の目黒に統合幕僚幹部学校というのがあるんですね。陸海空の精鋭を育てる、高級課程というところで、幹部と候補生を10年教えてます。
なにを教えているか。戦争の勝ち方です。それを教える人がいないんです、日本には。なぜかというと、戦争にどう勝つかは、アメリカが考えるんです。自衛隊ってのは、非常にいいにくいんですけど、アメリカの二軍なんです。アメリカが考える戦略にどう従うか、ということだけをずーっと戦後70年考えてきた。
「もしかしたら戦争が回避できるかもしれない」
そういうことを主体的に考えたことが、日本はないんです。70年間。これはほんとうなんです。自衛隊のカリキュラム、幹部候補生を教えるカリキュラムがそういうふうにできちゃってるんですね。
ボクはあまりテレビは観ないんですけど、今日の朝、たまたまみたら朝からですね、◎◎党の◯◯さんが出ているんですねCMに。「この国を守る!」…筆頭に出てくるのが、北朝鮮の脅威なんですよ。
僕は自衛隊の先生でありますし、国立大学の教員でもありますし、教えてる自衛隊の最高司令官は、◯◯首相です。その立場で非常に言いにくいんですけども。
今、日本の国防の最大の脅威は、◯◯政権です。これは、リベラルな立場で言っているんではなくて、極めて専門的な立場で申し上げています。その理由をおはなしします。
実は、先月、今から3週間前ぼくはソウルにいました。トランプ政権がこれから戦争やるやる、って言ってるソウルって、北朝鮮の国境から、50キロちょっとしか離れてないんですよ。ここから名古屋駅のちょっと先ぐらいです。そこに敵がいるんです。大砲向けてるんです。そこに呼ばれたんです。
だれが僕を呼んだんでしょう。
アメリカ軍、陸軍の太平洋地区最高司令官のロバート・ブラウン大将です。いちばんえらい人です。
ソウルでこの時期に太平洋地区の32カ国の、陸軍の最高司令官だけを呼んだ会議を開くから、そこで講演してほしいと依頼されました。アメリカに呼ばれたんです。
なんで、この時期に、アメリカの陸軍がそういう会議を開くか。
それもソウルですよ、ソウル。
アメリカは、一枚岩じゃないんです。
アメリカには大統領府がある。イケイケどんどんですね。◯◯さんみたいに。
アメリカには、国務省があるわけです。外務省にあたる。国防総省があるんです。軍があるわけです。軍の中でも、陸、海、空とある訳です。その中の陸軍です。戦争回避したいんです。彼らは。なぜかというと、戦争が始まっていちばんおはちを食うのは、陸軍なんです。それは、空軍であれば、基地を飛び立って、爆弾落として帰ってくるだけ。それだけですよ。爆弾落として、そのあとどうするんですか?
敵を倒すのは政権を倒すのは簡単なんです。アメリカの技術をもってすれば。金正恩なんて、すぐ◎◎ます。なぜ、それをしないのか。リスクを考えているからですよ。戦争というのは、敵国の政権を倒すだけで終わりじゃないんです。その後に、人民がいるんですよ。その人たちを統治しないといけないんです。そこではじめて、戦争に勝ったというんです。
日本人わかんないでしょ、この難しさ。だって、我々はうまく統治されたわけですよ。私たちは唯一の成功例なんです。我々が。
ところが戦後、アメリカはアフガニスタンで失敗した。だから私が呼ばれたんです。その前はベトナム。イラク。すべて、敵は倒したけど、そのあとの占領統治で失敗した。つまり、戦争に失敗してるんです。
だから、「開戦した場合のコストとリスクを将軍たちに教えてくれ」、という依頼でした。これも、アメリカなんです。
大統領は、やれやれ言ってますけど。そこを考えて、じゃぁ日本政府はどうするか、って考えなきゃいけないんですよ。
ところがどうしたわけか、トランプ政権の足元で、小型犬みたいに吠えてる国があるわけです。これが残念ながら、我が国の◎◎なんです。
もし、開戦したらどうなるか。ソウルが火の海になる。50キロしか離れてない。米軍を海外に置く。我々も出なきゃならない。たぶん、そこまでだったら、アメリカは総力をかけてあの政権を倒すでしょう。倒した後が、問題なんですよ。だって、200万人いるんですよ。あっちの軍が。
トップの首を落としたら、簡単に投降すると思いますか? しないんです。そっからが大変なんです。内戦になります。アメリカはいつでも、手を洗って、自分のとこに帰ってきます。戦場となるのは、朝鮮半島かもしれない。ソウルかもしれない。もしかしたら日本かもしれない。
これが日本や韓国、こうした立場に置かれた国を「緩衝国家」といいます。つまり、大国の戦争の狭間にある。戦場となるのは、我々なんです。アメリカ本土じゃないんです。それも、通常戦力でできるわけです。何万人も死にます。試算が出てます。
だから、気をつけてほしいわけです。だって、アメリカの陸軍の軍人たちが、自分たちの代表に、気をつけさせるために、こういう会議を開いてるんですよ?
なーんで、日本の首相が煽ってるんですか?…でしょ?
今、会場にお子さんたちがいらっしゃいますが、今ある平和がお子さんたちの代に、もし、なかったとしたら、それをそういうふうにさせる、最大の脅威は、大変申し訳ないけど、◯◯政権です。ぜひ、これは、ほんとにご近所の方に、ここに来られているみなさん、伝えて下さい。このままにしていたら大変なことになります。ぼくだけじゃないんですよ、実は言ってるのは。自衛隊のOBたち、それも幹部経験者の一部の方はキャンペーンをはじめました、実は。粛々と。反政府運動はできないけども、立場としてね。◯◯さんのあのやり方は、まずい。日本の国防を脅かす。国防をだれよりも知ってる方が、そういってるんですよ。…以下略…。
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この伊勢崎賢治氏の話は、支持政党がどうの、憲法がどうのという以前に誰もが知っておきたい内容だと思います。ましてやひとつの中国=内政問題と言われている台湾と中国の問題にアメリカが触手をのばし、よりいっそう深入りしてしまえば、日本は難しい立ち位置に追い込まれることに間違いありません。最悪のシナリオとしては戦場になりかねません。
あまり深いところまでは知られていないわが国の外交・防衛に関する現状の一端を知りうるという意味で大変貴重な講演のように思います。軍事力を増強すれば済むなどという問題ではなさそうです。

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