「八重の桜」寸感

第1回から第3回目までの放映をみて思ったことを少々。その1、黒船来襲について、定番のように《驚き》の情景として描かれるが、当時、海岸沿いではアメリカの捕鯨船が既に幾度となく姿を見せていたこと等を考えるといかにも大仰なのではないか。ましてや天保13年(1842)、幕府はすでに「外国船打払令」を廃止し、遭難した船に限り補給を認めるという「薪水給与令」を出し、開国に向け実質的な歩を進めていたのである。嘉永6年(1853)のペリー艦隊の来襲についても幕府は少なくとも3年ほど前からその可能性についての情報を得て、認識していた事実があったわけで、動揺はあったにせよ、城内が慌てふためくような状態ではなかったのではないかと考えられる。その2として、日米和親条約を交わす際に、林復斎(大学頭)たちの努力によって不利な条文にならないよう周到に準備し対処したことなどの大切なファクターが全然描かれていないこと。その3、佐久間象山も含め、吉田松陰、勝海舟などをかなり美化、誇張して描いていること。その手法からみえてくるのは、旧態依然たる幕末維新論(新政府が記述した内容)の延長線上でそれぞれの人物がイメージされているのではないかということ。この3点がとくに気になった。そうは言っても、テーマとしてはやはり興味深いものなので、とりわけ井伊直弼の描き方、そして孝明天皇と松平容保の関係などをこれからどう描いてくのか、しばらくは注視していこうと思う。

八重の幼年期を演じた子役の鈴木梨央はサプライズだった。それに、西郷頼母役の西田敏行はさすがにいい味出していると感心してしまう。綾瀬はるかの演技もナチュラルで嫌みがなく好感が持てる。

いずれにせよ、奥羽の視点から幕末を描く作品なので、1年を通して「八重」と付き合ってみることにしたい。

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