気の早い、年が明けてからの話ですが、いま制作中の図書2点をご紹介させて頂きます。
1. 『パリの街角から』阿部和久著 四六判 200頁前後 並製本 2016年1月下旬刊行予定
定年退職を機に、フランスへの9ヶ月におよぶ語学留学を果たした著者。パリの街角を中心に体験したさまざまなエピソードを軽妙なエッセイとしてまとめたものである。留学のための準備からその手続き、渡欧後のオペラ鑑賞記から当地のグルメ、語学学習で出会った学友たちと深めた交流など、バリエーション豊かに著者の人間的な魅力がパリという街との交響の中に散りばめられている。なかでもパリ滞在中に起こった「シャルリー・エブド本社襲撃事件」の現地からの報告は生々しく印象深い。現職最後の赴任校であった山形県立山形西高等学校の「西高通信」や山形新聞に連載した「パリ滞在記」の原稿に手を加えて全体を再構成した一書。
2. 『養正館のひぐらし』野口千明著 四六判 370頁前後 上製本 2016年2月下旬刊行予定
慶応4年(1868)の戊辰の役において、出羽天童藩が奥羽鎮撫総督府の先導役を命じられ、中老吉田大八がその名代を担わされた庄内藩征討戦。これを天童藩の藩校養正館に学ぶ少年たちの目線で描いた時代小説。著者曰く「戦役において重要な役割を果たしつつ、あまり語られることのなかった〝最上の小文治(庄内藩に加勢した博徒-引用者註)の身勝手な動機 〟や〝 中村次郎兵衛(庄内藩物頭)の藩への忠誠心 〟といったものを通じて、戦が詰まらない偶然や個人的な恨み、そんなことを契機に始まり、関わりのない人々が苦しむものであること。そんな慌しい幕末の暮しにおける喜びや悲しみを、多感な少年たちの日々を通じて描いてみた」と。著者熟成の書き下ろし作品である。
刊行まで、ぜひ期待してお待ちいただきたいと存じます。