『るろうに剣心』全編を観る

残念ながら劇場ではなかったが、茶の間のテレビ(WOWOW)でシリーズ3作品をやっと観ることが出来た。和月伸宏による日本の漫画『るろうに剣心〜明治剣客浪漫譚』を原作とした日本の実写映画シリーズ。    主演・佐藤健。監督は大友啓史。製作・配給はワーナー・ブラザース映画。
第1作は「東京編」。第2作『京都大火編』、第3作『伝説の最期編』。                 「文翔館」や「千歳館」でも撮影が行われた。

原作は漫画ということで、はじめは軽い娯楽として眺めていたが、どうしてどうしてモティーフは幕末動乱の錯綜した重層構造をけっこう抉り出している感じがあった。もちろん作品はどこまでもフィクションなのだが、新政府軍と旧幕府軍の戦いという表立った図式の底で繰り広げられた両陣営間の捻れ。幕末期を生きた誰もが問われたであろう思想的な葛藤。新政府に使い捨てにされ抹殺されていった多くの剣客たち。かたや主君に裏切られた、幕府のために戦った者たちの癒えることのない失望感。それら完結しない屈折したカオス状の精神が国家転覆への野望として明治新体制下にジリジリと胚胎し続けて行く。その矛盾を、佐藤健演じる緋村剣心、通称「人斬り抜刀斎」VS 原作者の和月伸宏が一番気に入っているらしいキャラクター志々雄真実(ししおまこと/キャスト:藤原竜也)のバトルとして昇華させ、構成したのがこのドラマだ。

登場人物の位置づけも結構史実を意識しているニュアンスもあり、面白い。京都見廻組に所属した御庭番の生き残り、あるいは新選組三番隊組長で明治維新後警視庁の警察官となった斉藤一等々…。ここでは詳細は書かないが、まだご覧になっていない幕末ファンにおすすめの映画であることは間違いなさそうだ。

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